昨日に引き続き拓郎のこと。。
昨年のツアーライブアルバムに収録されている「リンゴ」
こちらも、アルバム『元気です。』で41年前に発表されました。
アコースティックギターをかき鳴らし
字余りの歌詞をひとつ残らず語るように音符にあて
ぼくと君とリンゴ、ただそれだけが映るわずかな時間の光景。。
ひとつのリンゴを君がふたつに切り
二人で仲良くかじる
このリンゴは昨日二人で買って
ぼくがお金を出して
おつりは君がもらった
ふたつめのリンゴの皮を君が剥く
欲張ってほおばるから
話せなくなってしまった君
それだけを淡々と、そして一気に歌う1分50秒です。
当時、四畳半フォークなどという言葉もあり
ごくごく身近な対象を叙情的かつ感傷的に歌うものも多かったように思いますが
そんな中でも拓郎の「リンゴ」には衝撃を受けました。
他とは明らかに異なるリズムと旋律が独特でした。
「よしだたくろう」らしい曲だと思います。

この曲を聴くと、決まって浮かぶ想い出がありまして。
学生時代、友だちだった夫の下宿にたくさんのリンゴを抱えて訪ねた時のこと。
当時、自分が住んでいた所の最寄り駅前の果物屋さんでリンゴを買い
入れて貰った紙袋を抱え、6本の電車を乗り継ぎ出かけて行きました。
下宿そのものはずい分と古い造りで、廊下なども薄暗かったのですが
彼の部屋は意外に明るくこぎれいに片付いていました。
本当はちょっと緊張もしていたけど、なんだかほんわかと暖かい部屋の空気にいつしか居心地の良さを感じて
勧められるまでもなくコタツに足を突っ込み、いつものようにウダウダと話し始めました。
その内、これ何?と彼が聞き
あ~!リンゴ!食べる?剥いてあげるね~と軽やかに立ち上がったはいいけれど
正直、あの頃の自分は親に何でもして貰っていて、リンゴを剥くことすらめったにしたことが無く
ナイフを借りてリンゴと向き合い、一瞬途方に暮れたのでした。
ま、やるしかない・・と、けっこうな時間の後。。
デコボコでギザギザ。剥き残しの赤や時間かかり過ぎで何だか既に酸化?の茶色が
リンゴの色をくすませ、くたびれさせている。
そんな有り様のリンゴちゃんたちをお皿に並べ「どうぞ。。」って。
2個目は彼がするすると手際よく剥いてくれました。
ついでに美味しいお紅茶なんぞも淹れてくれました。
ティーバッグなんかじゃない。私は初めて見たのですが、お洒落な道具を使ってお茶の葉っぱから。
まるで女の子のような趣味?嗜好?
それまでの彼のイメージと全然違って、この人、何?と内心後ずさりしたのでした。
そういうちょっと分からないところ、今もあるな。
帰り、駅まで送ってくれて、いつ買ったのかお土産まで持たせてくれました。
お土産が何だったか忘れてしまったけど、そんな気配りの出来ることにもの凄く感心したことを覚えています。
だって同級生(歳は彼が上だけど)ですよ~。しかも友だち~。
ハタチそこそこの男子がそんな気配り。
おぬし、なかなかやるなぁ~と思いましたね。
まあそんなわけで、「リンゴ」を聴くとあの時の光景が蘇るのです。
ふたつめのリンゴの皮を君が剥く
ぼくの方が巧く剥けるのを君はよく知ってるけど
リンゴを強く齧る 甘い汁が唇をぬらす
左の頬を君はぷくんとふくらませて
欲張ってほおばると
ほらほら 話せなくなっちまうだろう
「リンゴ」より