すっとんきょうでゴメンナサイ

風の吹くまま気の向くまま

父と会って

 

今年の6月に亡くなった母のお墓参りを兼ね
先日、父に会いに行って来ました。
 
サービス付き高齢者向け住宅、いわゆるサ高住に暮らす父に会うのは
母の初盆会以来。
母が亡くなってから一人残された父が心配で
定期便のように一日一度は電話をかけ
初盆を済ませてからも毎日声を聞いてはいました。
日々のこと、周りの人たちのこと、
どうということも無い話をほんの数分。
それでも、
声でちょっとした体調の変化などもわかるので
具合が悪そうな時には早めの対処をするよう言い聞かせたり
「変わりありません!」との晴れやかな声が聞ければ安心したり。
少し前からは、麻雀の先生として
共に入居している方たちと
大いにコミュニケーションを図っているとかで
楽しげな様子に良かったなぁと。
 
久しぶりに会う父はとても元気でした。
色鮮やかなピンクのセーターを着てこざっぱりと。
「元気だねーー!」と驚くと
「そやろ。オレは96歳まで生きる!」と息巻いています。
何故96歳なのかわかりませんが(笑)
 
ヘビースモーカーだった父ですが
70歳代半ばで大病を患いきっぱり煙草をやめました。
が、母が亡くなる少し前から再び喫煙するように。
体のことを心配し注意する兄や私に
「好きなようにさせてくれ」とキレ気味に言った父。
肉体的な衰えに伴い
好きなことも思うように出来なくなり
母の介護にも疲れ
鬱々とした気持ちを和らげる手段なのかなと
父の気持ちもわかる気がして
まあいいか、とその時思ったのでした。
残りの人生、好きにしてと。
 
今回、いよいよ堂々と煙草をふかしている父に
96歳まで生きたいならおタバコは控えめに、
と口から出かかりましたが、やめておきました
 
 
 
 
そんなことがあって
 
いつものように糸井重里さんのエッセイを読んだら
お父様のことでした。
 
「今日のダーリン」より。

 
ラジオ深夜便』という番組、父親が、
どんなに酒に酔っていても枕元のラジオを点けて、
聴きながら眠ってしまっていた放送でした。
父の寝ている部屋から、ずっと男声アナウンサーの声と、
ときどき音楽が漏れ聞こえている。
そして、何時ごろなのかじぶんで気がついて、
スイッチを切って、また寝る。
結局、あれは聞いていたんだろうか、よくわからない。
でも、好きな番組なのだと本人は言っていました。
いまではもう、年下になってしまった酔っぱらいの父が、
なにがうれしくて、なにが好きだったのか、
生きているときには、あんまり話しませんでした。
いまごろになって、『ラジオ深夜便』が好きだったとか、
ふとね、思いだすことになったんです。

あとは、歴史の本が好きだったなぁとか、
スキーが好きだった、晩年はお寺の手伝いが好きだった。
盛んに「アンチ巨人だ」と言っていたけれど、
日記を見たら巨人ファンらしいとわかったこともある。
あとは若いころからの友だちがいて、
ほんとに週に一度くらいの頻度で会って飲んでいた。
そんな断片は憶えているのですがね。

あの人に、なにかしらよろこんでもらえることを、
もうひとつくらいはしたかったなぁと思うのですが。
ラジオ深夜便』の歌をつくったから、
それで勘弁してもらおうかなぁ。

あとは、ご本人よりも丈夫で長生きしていることとか、
たまには思い出しているよということだとか、
そういうことが、父というもののたのしみだとしたら、
それができてるのは子としてもうれしいです。
まぁ、ぼくがじぶんの子どもに望んでいるのも、
まったくそういうことですから、それでいいのだですね。

 

 


自分よりも年下になってしまった生前のお父様への思慕の情が
ふるふると溢れていて
年上の方にこんな言い方、何ですが
糸井さんのいじらしさにウルッ
 
 
親と子って
きっとこうなんでしょうね。
 
 
子は、こうして
親を思い出すんでしょうね。