すっとんきょうでゴメンナサイ

風の吹くまま気の向くまま

「なりたい」ものは何ですか?


糸井重里氏のエッセイのようなもの 「今日のダーリン」から

「狼になりたい」という歌があった。
日常のなにげないけれどちょっとざらつく景色を、
ある種のドキュメンタリー映画みたいに描いていって、
下の句のように「狼になりたい」と二度繰り返す。
凄みのある「なりたい」だった。
1979年に発表された中島みゆきの歌だ。

1987年に「ドブネズミみたいに美しくなりたい」
と叫んではじまる「リンダリンダ」が世の中に出てきた。
イギリスのパンクロックというものが、
日本ではこんなふうに産声をあげた、と思った。
ブルーハーツは、この詩でみんなに知られていった。
いま、ひとつのヒット曲としてあらためて聴くと、
「ドブネズミになりたい」とは歌ってないと気づく。
(ドブネズミみたいに)「美しくなりたい」のだ。

「風になりたい」もあった。
「あなたの海になりたい」もあった。
「猫になりたい」もある。

と続く。

(中略)

そして、

なれそうで、なれるかもしれなくて「なりたい」場合と、
なれるわけではないのだけれど「なりたい」場合がある。
「カメラマンになりたい」などのように、
考えようによってはすぐなれるのに、
遠くを見るように「なりたい」と言ってることもある。

ある時期、若い人たちが「有名になりたい」と、
さかんに言っていることがあった。
いまでも、「有名になりたい」は流行してるのだろうか。
ぼくも「なりたい」のことは、けっこう考えてきて、
結局、「ホームランになりたい」で、落ち着いている。


「狼になりたい」のワードに食いついた。
大好きな中島みゆきさんの、特に好きな曲です。
カラオケでもハンパない感情移入で熱唱します。
“ちょっとざらつく景色”という糸井さんの表現に唸らされました。さすが。

次に、「ドブネズミみたいに美しくなりたい」
わかる人にはわかる、ブルーハーツの名曲のあまりにも有名なフレーズ。
ドブネズミを美しいと叫ぶ甲本ヒロトの歌詞にオバサンの私も痛い程の衝撃を受けました。
あの頃の若者の心を一瞬で掴んだのではないでしょうか。

なーんて、自分は自分で好きなこと書いちゃったけど
糸井さんのテーマは「なりたい」について。

ご自身の「なりたい」は「ホームランになりたい」。
おそらく其処には深い意味があるのでしょう。
いや、無いのかな(笑)

「なりたい」ものを、ある意味無責任に考えて言い合ったりするのは楽しい。
ほとんど冗談だけど、心の奥底ではマジな感情もあるから
深層心理が現れるかもしれないし
単純に面白がって想像がとんでもない方向へ膨らむのも悪くない。

自分がなりたいのは、空を飛ぶ鳥。
なれるわけはないのだけれど「なりたい」ものです。

なれそうで、なれるかもしれなくて「なりたい」ものは、正直無かったかなぁ。
これから見つかるかなぁ。


糸井さんのエッセイは

「サウイフモノニ ワタシハナリタイ」のことも思い出す。

で締めくくられて。
ご存じ、宮沢賢治雨ニモマケズの一節です。

畳み掛けるように(いやもう少し弱い印象かな・・)並べられた賢治さんの「ナリタイ」に
自分はきっとなれない。
厳しすぎて、重すぎて、立派すぎる。
ただ、
いつもこの詩に出会うと心が震えて仕方がない。
なれないけれど
「サウイフモノニ」なりたいからでしょうか。