すっとんきょうでゴメンナサイ

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「100万回生きたねこ」を読んで

 

今週のお題】読書感想文

 

100万回生きたねこ  作・絵 佐野洋子

1977年に出版されて以来、超ロングセラーの絵本です。あまりにも有名。
ですが、この絵本の存在は知っていたものの、子育て時代も含め何となく読まないままで。

それで、10年ほど前になるでしょうか。図書館で借りて読んだのが初めてです。

 

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主人公は100万回しんで、100万回生き返ったねこ。
100万人の人がそのねこを可愛がり、100万人の人がそのねこがしんだとき泣きました。
けれど、彼は1回も泣かなかった。
どの飼い主もねこを大切にしてくれたのに、ねこはどの飼い主も大嫌いでした。
のらねこになり誰のねこでもなかったとき、
初めて自分のねこになった彼は、自分が大好きでした。
どんなメスねこも彼のお嫁さんになりたがったけれど、
「おれは、100万回もしんだんだぜ。いまさらおっかしくて」と言って相手にしなかった。
ねこは誰よりも自分が好きだったのです。
そんなねこがある時、白い美しいねこに出会うのです。
彼女は、ねこが「おれは100万回もしんだんだぜ!」と自慢しても「そう」と言うだけでした。
自分のことが大好きだったねこは腹を立てて、何度も白いねこのもとへ行き
「きみはまだ1回も生きおわっていないんだろ」と言うのですが、
彼女はやはり「そう」と言うだけでした。

ある日、ねこは、白いねこの前で、くるくると3回ちゅうがえりをしていいました。
「おれ、サーカスのねこだったこともあるんだぜ」
白いねこは、
「そう」といったきりでした。
「おれは、100万回も……。」
といいかけて、ねこは、

「そばに いても いいかい」

と、白いねこにたずねました。
白いねこは、「ええ」といいました。
ねこは、白いねこのそばに、いつまでもいました。
     
白いねこと一緒になったねこは、やがて生まれたたくさんの子ねこと白いねこを
自分のことよりも好きになります。
「おれは、100万回も…。」とは言わなくなりました。
子ねこたちが巣立って、白いねこが少しおばあさんになっても
ねこはいつまでも一緒に生きていたいと思いました。
そうして共に老い、ある日愛する白いねこが亡くなってねこは初めて泣くのです。
夜になって朝になって、また、夜になって朝になって、ねこは100万回泣きました。

 

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そして、ある日のお昼にねこは泣きやみ
白いねこのとなりで静かに動かなくなる…

ねこはもう、けっして生きかえりませんでした。

 

…………

 

「そばにいてもいいかい」 

 

ねこがそう言った場面で急に胸が締め付けられ、ちょっと泣きそうになりました。
ねこは誰のことも嫌いで、自分だけが大好きだったけど
でも本当はずっとそう言いたかったのかな
そう言える相手を求めていたのかな
ふと、そう思いました。
白いねこは「100万回しんで100万回生きた」ことや「サーカスのねこだった」ことに見向きもしなかったけど
ねこがただそのままでそばにいることを受け入れてくれた
それでいいんだと思わせてくれた
そのことは何よりもねこを幸せにしてくれたのでしょう。
そして、初めて自分以外の誰かを愛することを覚えたのかもしれません。

それにしても、
どうしてねこは、誰のことも嫌いだったんだろう
みんなねこを可愛がってくれたはずなのに
どうしてねこは、あんなに突っ張っていたんだろう
どうして自分だけしか愛せなかったんだろう
そんなことも思いました。

他人の寂しさは、そう簡単にはわからないものなのでしょう。

 

2010年11月、佐野洋子さんが亡くなられて、その追悼記事の中で
下関市で児童書専門店「子どもの広場」を開いておられる横山真佐子さんが、この本について

「自分自身を生ききるのは、どんなに難しいことか。しかも、一人では生きられない。他者を自分以上に愛することができたとき、満足して自分の生を終えることができるのだと伝えてくれる本」

と述べられていました。

 

なるほど…です。

 

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