新型コロナウイルス感染拡大以来、とんと遠ざかっていた映画館。
振り返ると、2月末に『1917命をかけた伝令』を観たのが最後。
昨日、久しぶりに映画館に出かけた。
『行き止まりの世界に生まれて』
2018年アメリカで製作されたドキュメンタリー映画である。日本では2020年9月4日公開。
「アメリカで最も惨めな町」イリノイ州ロックフォードに暮らすキアー、ザック、ビンの3人は、幼い頃から、貧しく暴力的な家庭から逃れるようにスケートボードにのめり込んでいた。スケート仲間は彼らにとって唯一の居場所、もう一つの家族だった。いつも一緒だった彼らも、大人になるにつけ、少しずつ道を違えていく。ようやく見つけた低賃金の仕事を始めたキアー、父親になったザック、そして映画監督になったビン。ビンのカメラは、明るく見える3人の悲惨な過去や葛藤、思わぬ一面を露わにしていくー。
希望が見えない環境、大人になる痛み、根深い親子の溝…ビンが撮りためたスケートビデオと共に描かれる12年間の軌跡(公式サイトより)
そして、
閉塞感のある環境で生きる若者たちの姿を通して、親子、男女、貧困、人種…さまざまな分断を見つめる。
趣味のスケートビデオから始まったこの映画は、若者たちのパーソナルな物語でありながら、今の世界を映しだす奥行きをみせ、「21世紀アメリカの豊かな考察」(ニューヨーク・タイムズ)、「ドキュメンタリーの新時代」(WIRED)と評された。アカデミー賞、エミー賞Wノミネート、サンダンス映画祭をはじめ59の賞を総なめ(公式サイトより)
家庭内暴力、親からの虐待、貧困……
傷つけられ温もりの欠片すら見つけられない日々を送る彼らが
唯一、笑い合い解放される場所がスケートボード
スケートボードを操り疾走するシーンの何と美しいことか
重く痛々しい現実が描かれる中で、何よりも強く印象付けられた
強張った心を癒してくれるように、その瞬間は自分も解放された
それでも、心の反対側では
切なさと繊細さで奏でるBGMが彼らの隠された悲しみを伝えるようで
儚さと危うさに、また辛くなるのだった
どうか少しでもハッピーに
どうか少しでも希望を示して終わって欲しい
そんなことを切望しながら後半は観ていた
登場人物の一人でもあり、監督のビン・リュー(Bing Liu)のメッセージから
明確になったことは、暴力と、暴力によってクモの巣のように広がる影響は、大部分で永続されてしまうということです。これらの問題は文字通りにも比喩的にも、扉の向こうに留まってしまうから。僕の願いは『行き止まりの世界に生まれて』の中で扉を開いてくれた登場人物たちによって、同じようなことで苦労している若い人々が勇気をもらい、彼らがその状況を切り抜けられること、生きて、自分たちの物語を伝えられること、そして自分たちの力で人生を作っていけるようになることです。
アメリカだけではないだろう
日本でも同じだ
「行き止まりの世界」
そんな世界を作った覚えはない
そんな世界に生まれるつもりもなかった
そんなジレンマを抱えながら生きる若い人たち
彼らがこの映画を観たらどう思うのだろう
ビンの願いが届くことを、私も願いたい
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