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「アナザー・ワールド 王国その4」よしもとばなな~自然とともに揺れる心

 

よしもとばななさんが好きで、『王国』シリーズを夢中になって読んだ時期がある。

シリーズの最後は「アナザー・ワールド 王国その4

 

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『王国』シリーズその1、その2、その3、は、特別な力を受け継ぐ“雫石(しずくいし)”という名の女の子の物語。

小さな山小屋で祖母と自給自足の暮らしをしていたが、ある時、都会へと出て行き、そこで目の不自由な男性占い師“楓”と、そのパートナー“片岡さん”と出会う。

そして、その4「アナザー・ワールド」は“雫石”の娘、“片岡ノニ”の物語。

帯の言葉より

「苦しいときは、小さいときのことを思い出してね。……」

視力の弱い占い師のパパ、薬草茶作りの達人のママ、そしてパパを愛するパパ2…。

3人の親の愛を一身に浴びて育った片岡ノニは、陽光降るミコノス島で運命の出会いをした。

その相手は、<猫の王国の女王様>と死に別れた哀しみの家来・キノだった。

(不思議なお話感満載でしょ。「?」が頭に浮かぶ人、多いかな(笑)。出来れば、その1から順番に読むことをお勧めしますが、多分、思いのほか読み進めやすいのでは。私などはばななさんのワールドにあっという間に引き込まれ、その心地良さと切なさを味わいながら一気に読み終えました。あくまでもワタシ個人の感想ですが…) 

 

初めて本を手にした時、まず「あとがき」に目を通してみた。

(本文読む前に「あとがき」読みたくなるケース、たまにあるんです(^▽^;))

初めの数行を目にして驚いた。

2011年6月頃のことである。

 

これからしばらくは大変な時代が続くだろう。

直感と本能を信じ、自分を保つことをたえず続けていけないと、生きていくのが困難になるのではないか。

そんなときに、少しでも役立つツールのように、この小説が読者に寄り添えたらと思う。

彼らの奇妙なライフスタイルをまねる必要はない、ただ、自然とともに常に揺れている心、そこだけ読んでもらえれば。

(略)

 

「あとがき」には、2010年春、と日付があり、

まるでその一年後の、つまり東日本大震災後の、この国の状況を予見していたかのようだと思ったものだ。

不思議な思いのまま、「本文」の最初のページを開いた。

 

別の場所へ行きたい そこは平和だろうか?

別の世界へ行きたい この世界はほとんど滅びてしまった

それでも数え切れない夢を見る 光を見たことがない

別の世界へ行きたい 私が行ける所なら

 

海が恋しくなる 雪が恋しくなる 蜂が恋しくなる 育っていくものが恋しくなる

 

木々が恋しくなる 太陽が恋しくなる 動物が恋しくなる 君たち皆が恋しくなるだろう

 

別の場所へ行きたい そこは平和だろうか?

別の場所へ行きたい この世界はほとんど滅びてしまった

 

あらゆる歌を歌う 鳥が恋しくなる 長い間私にキスしてくれた 風が恋しくなる

 

………………


心が引き寄せられるように何度も何度も読み返すと、やがて悲しくなってきた。

どうしてもっと大切にしなかったのだろう

どうしてもっと怖がらなかったのだろう

どうしてわからなかったのだろう

そんな思いに責められる気がした。

ばななさんがこの本を書かれたときには福島の原発はまだ事故を起こしていなかった。

私たちはもうずっと前から多くの重大な間違いをし続けているのかもしれない。

そんなことを考えずにはいられなかったことを覚えている。

 

 

そしてコロナ禍の今、

あとがきに記された数行に、再び問いかけられている気がする。

 

これからしばらくは大変な時代が続くだろう。

直感と本能を信じ、自分を保つことをたえず続けていけないと、生きていくのが困難になるのではないか。

 

ばななさんが読んでもらえればと言った“自然とともに常に揺れている心”

まさに私がばななさんの書くものを好きな所以であり、

今こそ、そんな心でありたいと思う。

 

 

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