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よしもとばななさん「スウィート・ヒアアフター」~心の自由に必要なのはとてつもない無頓着さと強さ

よしもとばななさんの「スウィート・ヒアアフターを読みました。

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Amazonの作品紹介に
惨劇にあっても消えない“命の輝き"と“日常の力"を描き、私たちの不安で苦しい心を静かに満たす、再生の物語。
とあります。

生死をさまよう自動車事故に遭いながらも、死の淵から生還した主人公。
同乗していた恋人を喪い、心身共に大きな傷を負い、自分が代わりに死ねたらよかったのにという思いを抱える。
やがて、事故後身についた不思議な能力によるスピリチュアルな体験や周囲との関わりの中で気づき再生していく物語です。


これまでもブログでばななさんの著書を何度か記事にしてきました。

人生への静かな肯定感
自然と共に常に揺れている心
幸福でもなく不幸でもない、ただ素晴らしいと思える日常

ばななさんの伝えたい思いが温かく沁みて、癒されるのと同時に勇気が湧いてくるのです。
そして、
何一つ疎かにせず丁寧に解き明かしてくれる心模様の繊細な描写が本当に好き。
「くせがあるし、夢見がちだし、興味のない人には全く興味のないことをくどくどとくりかえし書いている小説」と彼女自身書いているのだけど、
確かに夢見がちであるようで、そのリアルさが私にはたまらないし、目の前が開かれる思いがします。

以前、
よしもとばななさんの本を読むといつも感じるのは、ああ、わかるなあその感じとか、そうか自分がこうなのはそういうことだったんだとか、
登場人物の感情や感覚が自分と同化して、あれ?これってワタシのこと?って思う、と書いたことがあります。
そうして、自分でも自信が持てなかったり不思議だったりすることが赦され認められるようで、癒されていくのを感じると。


「スウィート・ヒアアフター」の中で印象に残った言葉です。

 朝日はどの街にも同じように美しく白っぽくふりそそぎ、いろんなことを洗いざらい強引に昨日の世界に持っていく。
また朝が来た、なんてすばらしいことなんだろう。
私は思っていた。生きているかぎり、朝が来るなんて、なんて夢みたいなシステムなんだろう。
人間がどんなにすごいことを考えたって、これにはかなわない。
強引に明るくしちゃう以外に、ものごとをみんなリセットしたりチャラにする方法はない。
これに乗っていれば命ある限り必ず生き延びられる、太陽ってなんてすごいんだろう。感動してしまう。


自らも太陽崇拝者として(笑)、心底共感。そう思って生きてきた頃があります。

そして、更にもっと強く頷いた言葉。

だれかの心が自由だということは、他の人をも自由にするんだ、でもそれにはとてつもない無頓着さと強さが必要なのだ


心の自由を求める自分。
同時に他の人にも自由であってほしい。
他の人の自由を阻害したくない。
そうであるために、
おのれの孤独を受け入れる強さを持ち、周囲に囚われず周囲を縛らない、と思ってきました。

そうか……無頓着
そうだ、それだ。ふっと痛快な風が吹いた気がしました。

独りを好むかのような私に、変わっていると違和感を持つ人もいたかもしれません。
周囲のあれこれに頓着せず飄々と受け流す私に、何を考えているかわからないと責める人もいたかもしれません。
それはおのれの心の自由を求めると同時に、自分の思いで他の人を縛りたくないからでもあったのですが、
正直言えば、自分は強くもなく、そうであろうと精一杯演じているとも言えるわけで、
時に悲しくなったし、腹が立ったり、そんな自分が惨めで自信がなくなることもありました。

でも、
それでいいのだ、自分が求める心の自由とはそういうことなのだとまた励まされました。
無頓着。そうであろうと思います。



この小説は2011年3月11日の大震災をあらゆる場所で経験した人、生きている人死んだ人、全てに向けて書いたものだと、ばななさんはあとがきに記されています。
あとがきの一部です。

 しかし、多くのいろんな人に納得してもらうようなでっかいことではなく、私は、私の小説でなぜか救われる、なぜか大丈夫になる、そういう数少ない読者に向けて、小さくしっかりと書くしかできない、そう思いました。
 もしもこれがなぜかぴったり来て、やっと少しのあいだ息ができたよ、そういう人がひとりでもいたら、私はいいのです。


自分はあの震災を体験したと到底言えませんが、
“ぴったり来て、息ができた”
ばななさんの小説でいつもその感覚を味わっているのだと思います。



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