すっとんきょうでゴメンナサイ

風の吹くまま気の向くまま

「鬼はーーーそと!!」


今週のお題「鬼」

時節柄、「豆まき」に因んでの「鬼」でしょうか(*´з`)

ということで、「豆まき」の想い出。


👹


節分の夜の豆まき。
生まれ育った実家でのそれは
いつも父の「やるぞ!」で始まった。

夕食後、やおら立ち上がり窓を開け放つ父。
左手には豆が入った升。

「鬼はーーーそと!!」

右手で豆を鷲掴みし大声と共に外に向けて、まく、まく、まく……………。

毎年、決まった流れでわかっていても
常軌を逸したかのような突然の大声にいつもドキッとさせられた。
まるで野生の雄叫びが如く。


住宅街の真ん中で大声なんて
令和の今なら近所迷惑と言われるかもしれなかったけど
時は昭和。
我が家だけでなく近所の家々からも「鬼は外」の声が聞こえた。
張り合うように大声を披露する昭和の親父たち。
その声を聞いて「○○ちゃんのお父さんだ!」と笑ったものだ。


アドレナリン全開で鬼を退治せんとする父の雄姿がカッコ良かった。
「福は内」と家の中にまかれた豆を兄と競うようにして拾い
歳の数だけと母に注意されながら、こっそり多く食べるのが楽しかった。


あの時代、どこの家にもあっただろうありふれた節分の光景だが
若く元気だった父と母、幼かった兄と私がいるそれらのシーンは
自分にとり特別感満載の懐かしい想い出である。


……………


時代が移り、だんだんと「鬼は外」の声が聴こえなくなったというのに
相変わらず雄叫びを上げる父だった。
成長した私には静かな節分の夜に響き渡る父の大声が恥ずかしかった。
いい歳して子供じみていると苦々しく思った。
とにかく父の言動にいちいちイラついていた頃だった。

「誰もやってないよ。もう止めたら。恥ずかしいよ」と言うと
「何が恥ずかしい。恥ずかしいことなんかない。やるぞ!」

外に向けていつものように大声で豆をまく父。
隣近所からは何も聞こえてこない。
居たたまれなくて自分の部屋に籠った。

翌朝、部屋には豆が落ちていて
昨夜の豆まきの痕跡に少し責められる気がした。

この家にはもう落ちた豆を夢中になって拾う子どもたちがいないこと。
父と母の寂しさを勝手に想像して
自分もまた寂しくなった。


周囲に流されたくない。
周囲に左右されず自分の意思を大事にしたい。
自分自身はそうでありたいと思っていたのに
周囲と同じにしない父が恥ずかしかった。

節分の夜に「鬼は外」と豆をまく。
父が言うように何も恥ずかしくない。
堂々と高らかに「鬼は外」と豆をまく父の何がイケナイ?

周囲を伺い、周囲に対して恥ずかしいことを恐れた私。
周囲と違うことに動じない父を実は心の何処かで誇らしく感じながら
それを認めることが出来ない幼稚な自分だったな。
そして、口先ばかりで情けなかった。


少なくとも私が家を出るまで父の「鬼は外」は続いた。
その後、いつまで父は豆まきをしたのだろう。


……………


結婚し子どもたちが生まれ、我が家の初めての豆まきの想い出。

一家の長として家族を守るべく「鬼は外、福は内」と豆をまく夫だったが
父の豪快な豆まきで育った私には、拍子抜けするほどのお上品ぶり。
もったいないからとほんの少しを部屋の中にパラパラとまく。
「鬼は外だよ、外にまかないの?」と言うと
「やだよ。恥ずかしい」

その言葉に内心ガッカリしたこと、憶えている。

私も父に恥ずかしいと言ったし、そりゃ恥ずかしいだろうことは理解できるけどね。


父の「鬼はーーーそと!!」が懐かしい。
今なら一緒に声を張り上げてしまいそう。
さぞスカッとするだろうな。

娘たちには「おかあさん、恥ずかしいから止めて!」と怒られるだろうけど(^▽^;)


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