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スピルバーグ監督の『ウエスト・サイド・ストーリー』~「分断」の果ての愚かさと虚しさ


映画『ウエスト・サイド・ストーリー』 


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監督はスティーブン・スピルバーグ

彼の作品のE.T.(1982年)は、今まで観た全ての映画の中で一番好きと断言できるほど好き。
他にもジョーズ』『未知との遭遇』『インディ・ジョーズ』シリーズ、『オールウェイズ』『シンドラーのリスト』『戦火の馬』などを観て、どれも面白かった。
先日テレビでたまたま観たA.I.も良かったなぁ。
主人公のロボットの悲しみが切なかった。

つまり、スピルバーグ監督のファンです。


その彼が『ウエスト・サイド・ストーリー』を撮る⁉

一瞬驚いたけど、予告編を映画館で観てからずーーっと楽しみにしていました。


劇場公開は2月11日。
直後は混むと考え、待ちに待ってようやく昨日、観てきたのでした。


始まってすぐ心を持っていかれたのは路上のダンスシーン。

It's Cool そのもの。

街中やダンスホールで繰り広げられるダンスシーンもめちゃくちゃお洒落でカッコ良くてワクワクしました。
特にシャークスのリーダー、ベルナルド役のデビッド・アルバレス
ベルナルドの恋人、アニータ役のアリアナ・デボーズのダンスが最高だった!


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2019年に日本キャスト版の舞台『ウエスト・サイド・ストーリー』を観たことがあります。

komakusa22.hatenablog.com


今回、スピルバーグ監督の『ウエスト・サイド・ストーリー』は
舞台とはまた違う臨場感が半端なかった。

カメラワークだったりアングルだったりが
斬新で華やかで楽しくて情感的で
スピルバーグならではと思いました。

彼らと一緒に走っているかのような疾走感や
彼らと一緒に踊っているかのような躍動感が
やっぱり凄かったです。


そして、
オーディションで約3万人の中から選ばれたというマリア役のレイチェル・ゼグラー
前作のマリア役、ナタリー・ウッドとは少し趣の違う可憐さや愛嬌のある表情が可愛くて
この作品での彼女の存在は大きいなあと。
彼女の歌う「Tonight」には心が震えました。


ブロードウェイ・ミュージカルの名作であり
1961年に映画化された際も世界中で大ヒットした作品ですから
そのストーリーはご存じの方も多いのでは。


⚠️ネタバレお断りの方はお気をつけください!

1950年代のニューヨーク。マンハッタンのウエスト・サイドには、夢や成功を求めて世界中から多くの移民が集まっていた。
社会の分断の中で差別や貧困に直面した若者たちは同胞の仲間と集団をつくり、各グループは対立しあう。
特にポーランド系移民の「ジェッツ」とプエルトリコ系移民の「シャークス」は激しく敵対していた。
そんな中、ジェッツの元リーダーであるトニーは、シャークスのリーダーの妹マリアと運命的な恋に落ちる。
ふたりの禁断の愛は、多くの人々の運命を変えていく。(映画.comより)


異なる移民同士の対立。
その間で恋に落ちるトニーとマリア。
そして悲劇的な結末。
実はたった二日間のお話です。


……………


ラストに近づくにつれ
今まさに起こっている悲惨な現実が脳裏に浮かび
無性に悲しくなりました。


グループ同士の対立の間で、愛し合う二人が引き裂かれる物語。

そして、現実でも
国と国の対立による戦いの中で
愛する人と引き裂かれ、愛する土地を奪われ
不安の中で彷徨わなければならない人たちがいる。

命を奪われる人も。

いつだって一番に傷つくのは
戦いなど望んでいない人たちであることへの憤りと虚しさ。


物語は最後に無意味な争いの愚かさと虚しさを教えてくれたけれど
現実の私たちはいつになったらそれに気づくのでしょう。


……………


スティーブン・スピルバーグ監督の言葉です。

考えの異なる人々の間の分断は昔からあります。
ミュージカルで描かれた1957年のシャークスとジェッツの分断よりも
私たちが直面している分断の方が深刻です。

人々の分断は広がり
もはや人種間の隔たりは一部の人の問題ではなくなった。
観客すべてが直面する問題なのです。
あらゆる世代に訴えかける深い物語です。

愛はどんな隔たりも埋めてくれます。
時代を超えて何度でもこの物語を思い出すことでしょう。


アメリカに存在する様々な「分断」。
人種差別、移民問題、経済格差、宗教、ジェンダーの問題など。

最初にブロードウェイで上演されてから60年以上が経っていますが
今もなおアメリカで燻り続け、時に表面化し大きな問題になっています。

彼が「今に通じる」と作ったこの作品は
アメリカだけでなく、世界中が「今」直面している問題だと言えます。


……………


「愛はどんな隔たりも埋めてくれる」

スピルバーグ監督の言葉は確かにそう。

「愛」でお互いを認め合い、許し合うことで
異なる立場の人たちの隔たりが埋められる。


でも、現実はそれが難しい。だから、争いが生まれる。


また、逆に言えば
そして誤解を恐れずに言えば
民族愛、郷土愛、宗教愛といった「愛」が暴走し、対立や争いを生むことも事実でしょう。

(もしかしたら、かの大統領の暴挙には彼なりの民族愛や郷土愛があるのかもしれなくて。ただ、それは到底許されるはずの無い、身勝手極まりない「愛」であることに間違いなく。多くの人を不幸にするだけの。)



この物語の中で「愛より大切なのは命」という台詞がありました。

実は不確かで身勝手なのが「愛」であるなら

何があっても、どうであっても
「命」が一番大切で
守るべきは「命」であると
全ての人が心に刻めたら

「命」を奪い合うような争いは無くなるのかなぁと

そうだったらいいのにと思ったのでした。



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