テレビを観ていたら
「コンサートで最前列の席に座ったことがある?」
と視聴者に問いかけていて
47%が「ある」の結果に、スタジオの芸能人が「えー⁉こんなにあるの?」と驚いていたけど
私も ある!
🎸
高校に入学してすぐの新入生歓迎大会で
3年生の先輩方が歌う井上陽水というアーティストの「傘がない」と「東へ西へ」に痛く衝撃を受けた。
今から始まろうとするピカピカのはずの高校生活の初っ端に
先輩方が苦し気に悲し気に歌う「傘がない」や「東へ西へ」は
少し前まで中学生の、まだまだ子どもだった自分に大いに度肝を抜かせ
楽しい事ばかりではない大人への階段が目の前に現れたように感じたものだ。
その後、陽水氏のレコードを片っ端から聴き漁り
当時、自分の近くに彼の歌は常にあった。
大学生の時、通う大学の学園祭で井上陽水氏のコンサートが行われると知り
早速、大学生協でチケットを購入。
全て自由席で、チケット代も安かったと思う。
場所は神田駿河台、本校舎の講堂。
当日、友人を誘い向かうが、開演時間ギリギリとなり
それでも何とか間に合い、ホッとしながら会場に入ると、席は満杯。
かろうじて2席空いていたのが、最前列の右端だった。
観客は皆、陽水氏の歌を聴く準備万端。
今か今かと視線がステージに注がれる中
それを遮りながらバタバタと横切る私たちに、心の中で舌打ちする人もいただろう。
スミマセンと私もまた心の中で謝りながらようやく席にたどり着き
腰を下ろした途端、生ギターが鳴り、幕が上がった。
歴史を感じさせる古めかしい造りの
ちょうど良くこじんまりとしている講堂は、ステージと観客席が近く
右端とは言え、そこは最前列。
陽水氏の歌声がビンビンと体に当たり、感動と喜びで大興奮。
陽水氏はたった一人、いや、もしかしたらもう一人いたか?
いずれにしても、生ギター1本(いや2本だったのかな?)、マイク1本のアコースティックなライブだったが
かえって、歌声の美しさや音圧をひしひしと肌で感じ
彼の才能に圧倒されるばかりだった。
最前列で井上陽水氏の“生”な歌を聴いたこと
本当にラッキーだったと今でも思う。
🎸🎸
最前列で、ということなら
娘たちが幼い頃に一緒に観た『アンパンマン・ショー』もそう。
地元の動物園の特設ステージで行われると聞き
家族で出かけて行った。
人気のアンパンマンだが、その日は観客は少なめ。
いつもなら少し後ろで観るところだが
せっかくだからと最前列、しかも真ん中に陣取った。
やがてアンパンマンが登場し、バイキンマンやドキンちゃんもいたか。
MCのお兄さんが会場を盛り上げようと
「さあ、みんなでアーンパーンマーーンと大きな声で言いましょう」と言った。
さらに、アンパンマンの言い方もレクチャー。
「アーンは楽しそうに、パーンはちょっと悲しそうに、マーーンはすごく大きな声で」とか何とか(あまり憶えていない^^;)
そして「さあ、誰に言ってもらおうかなあ」と会場を見渡す。
そもそも観客はまばら。
そこで最前列、ど真ん中にあたかもやる気十分で座っている私たちにお兄さんのアンテナがビビッ。
ヤバい!と慌てて目を逸らし顔を伏せたが
「ハイ、そこのおかあさん。やってみましょう!」
(⊙_⊙;)
やる気なんか一切無いのに
最前列で陣取っていた私がイケナイのか。
指名して欲しそうな顔してたのだろうか。
娘たちの手前「出来ませ~~ん」と駄々をこねるわけにもいかず
渾身の「アーンパーンマーーン!」をやってみせた。
お兄さんは「ああ、はい。いいでしょう」と、苦笑いな顔。
(やる気ありそうな顔して、そうでもないな)と思われたかもしれない。
それもまた、ちょっと辛かった( ;一一)
後日談だが、
何と、ショーの会場に夫の友人家族もいたとかで
「奥さんのアーンパーンマーーンは完璧でした」と言ってくれたらしい。
それを聞いて、救われる思いがしたのだった。
「傘がない」井上陽水