すっとんきょうでゴメンナサイ

風の吹くまま気の向くまま

過干渉は“愛情”という名を借りた“支配”?

 

今日からしばらく夫は実家へ。
さて、思いのまま過ごせる時間をどう使おうかと、先ずは図書館に出かけてみた。
駐車場には1台の車も無く、あれ?まだ開いてないんだっけと入口に向かうと
椅子に座り待ち構えている職員の女性に手指消毒を促されつつ「どうぞ」と。
緊急事態宣言以前はシニア達の憩い(時間潰し)の場所(笑)だったフロアは、椅子やソファーが使えないようになっていて
ああ、だから利用者が来ないんだと腑に落ちた。
本の貸し出しは通常通り出来て、但し利用時間は30分。自分の他に5人ほどいたかな。
久しぶりの図書館、並んでいる本を見て回るのが楽しく、あっという間に30分になろうとして、パッと目についた本を手に取り、貸し出しカウンターへ向かった。

「少年A」14歳の肖像  髙山文彦著  

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車に戻り、我ながら頭を捻る。どうしてこれだったんだろう…?
穏やかな気分にさせてくれる温かい語り口のエッセーなどを借りようと思っていたのに。
しかも、ハードカバーのそれは200ページ近くあり、字も小さい。
度数の微妙に合わない老眼鏡をかけて読むにはハードルが高過ぎる。
そんなことを考えながら持ち帰ったのだが
当然ながら、読み進めていくと
あまりにも衝撃的な事件の、解き明かされた事実や証言を記した内容に引き込まれるのだった。

と言いつつ、まだ全然導入部。今後じっくり読んでいく。
※ちなみに「少年A」とは「神戸・酒鬼薔薇事件」の犯人。この事件に関する書籍は様々あり、少年自身や両親が書いたものもある

 

実は、その導入部に引っかかった。

「少年A」の家族は両親と息子三人の五人家族で、「少年A」は長男。
父親はサラリーマン、母親は専業主婦で、一見どこにでもある平均的なサラリーマン家庭。
父親は仕事が忙しく、家の中のことは妻に任せきり。
母親は「少年A」を厳しく躾け、過干渉であったらしい。
小学三年生の時、「少年A」がノイローゼになりかけているということを医師に言われ
その原因が母親の過干渉が大きな要因になっていると指摘されている。

宿題を忘れる息子に

母親は息子がそんな失敗をくり返すたびに悔しがり、口やかましく責めたてた。どうしてほかの生徒と同じようにできないのか、そんな思いが彼女を過干渉にさせていた。父親は普段は無口で物静かな人物だったが、急に火が点いたように怒りだすことがあった。彼にとって父親は怖いだけの存在だった。診察を受けた医師に母親は「過去の失敗をあれこれとあげつらって、くどくどと子供を責めてはいけません。のびのびと育ててあげなさい」と忠告を受けた。(本文より引用)

 

ハッとした。自分の両親も似たようであったから。
そして、兄との関係も似たようであったと思う。
長男に寄せる期待や思いは別格で、それゆえなのだとは思うが
父は兄に対して殊のほか厳しく、男らしくあることを強い、スパルタで育てた。
結果、子どもの頃の兄は妹の目から見ても父に対して委縮していた。
母もまた、兄に対する期待値が高いゆえに厳しく、いちいち過干渉であった。
私などは下の子である気楽さや甘えもあってか、そんな両親に堂々と反発したものだが
兄は両親に対し従順であるように見えた。
やがて思春期を迎え、父の仕事の都合で兄は私たち家族と離れ一人で生活するようになる。
妹として、そのことは兄にとって言わばラッキーだったのではと思っている。

一人暮らしを経て、様々な他人との関りの中で兄は逞しく変わることが出来た。
いや、元々の兄自身であったのかもしれない。
干渉されずありのままの自分でいられて、兄は実はずい分と楽しい人間でもあった。
結婚してマスオさんになったが、義理の家族は皆自分を放っておいてくれて、それが楽だったと言った。

ずい分後になって、兄が
「小学三年の時、自分は母親のことを切り離した。何を言われても聞いとらんかった」
と言ったことがある。
「この人の言っとることはおかしいと思っとった」と。

冷淡にも聴こえる言い草に驚いたが
従順な子どものように見えて、あの頃既に兄は冷静に現実を見極め
心の中でしっかりと自分を守っていたのだ。

両親の晩年、自分の近くに呼び寄せて世話をしてきた兄である。
相変わらずの父や母に思う所もあったと思うが、長男の責任と言って最期を見送った。
両親に十分に報いた。立派だったと思う。

 

「少年A」が「少年A」となってしまったのは、両親との関係だけが原因ではないだろう。
けれど、過干渉のもたらす弊害は間違いなくあると思う。
“愛情”という名を借りた“支配”とも言えるからだ。

 

 

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