すっとんきょうでゴメンナサイ

風の吹くまま気の向くまま

「いいんだよ」~あたたかな自己肯定感

 

「周囲のおかげで、僕はあたたかな自己肯定感に守られてきたんですよ」

 

以前、新聞記事の中で見た五体不満足の著者である乙武洋匡さんの言葉です。

自分にとってもそれは、十分過ぎるほど思い当たることでした。

そう、私も確かにそうして守られてきた。

コンプレックスや過剰な自意識に苦しんだ時、

周りの人たちの温かさに引き戻され、自己を肯定することを思い出すことが出来た。

それはとても幸せなことだったのだ。

それが無ければ私は今こうしていられなかったかもしれないと、改めて思います。

 

「あたたかな自己肯定感」 

 

それはおそらく、どんな誰も心の底で求めていることではないでしょうか。

 

 

その少し後、歌手の尾崎豊さんを特集したテレビ番組を観ました。

そこには彼の遺した歌とともに、彼の歌に救われ励まされた人たちがいました。

 

番組の中で、

長年にわたって悩める子どもたちと向き合い救いの手を差し伸べてきた

夜回り先生こと、水谷修さんが語っておられました。

 

社会全体がイライラして、常にそのイライラが親から子へ、教員から生徒へと向けられている。

今、日本の10代の子どもの8割、9割は家庭でも学校でもいつも叱られ続け、ダメだダメだと言われている。

自分に自信のある子は、多少のいじめにあったって、先生から何言われたって、あいつはあいつ、オレはオレなんだよ、という生き方を持っている。

昔は子どもたちが強かった。それが今、子どもたちがすごく弱くなっている。

 

一日数百件のメールにひとつひとつアドバイスなさっていた水谷さん。

子どもたちは「いいんだよ」という言葉を待っている、と仰いました。

しかし、それまでの大人たちはダメだと言うばかりで、子どもたちは縮こまって動けなくなっていると。

 

「いいんだよ」 

「今までのことはみんなみんないいんだよ」

 

悩める子どもたちはそう認められることを待っているのだそうです。

そうやって認められたとき、子どもたちは今の状況を何とかしようと考え、動くのだと。

 

水谷さんは 尾崎豊さんの歌についても述べられていました。

 

そこには他人は居なくて、完全な一人称の歌がほとんど。

自分はこう思う、こうしたい、でも出来ない。辛い、苦しい。でも、しなないよと言っている。

キレイ事でなく、自分自身を美化してもいない。

そんな彼の正直な言葉が心の中にストンと響くのだろう。

 

16歳の少女。

中2の時、ある事をきっかけに大人への不信感をつのらせ、友だちの嘘に傷ついた彼女は、

生まれてこなきゃよかったと思い、学校へも行けなくなります。

自分に自信がなく、自分の存在が何なのかわからず、ただ怖かったそうです。

そんな苦しい日々の中でもがいていた彼女が導かれるようにして聴いた歌… 

 

「15の夜」

落書きの教科書と外ばかり見てる俺
超高層ビルの上の空 届かない夢を見てる
やりばのない気持ちの扉破りたい
校舎の裏 煙草をふかして見つかれば逃げ場もない
しゃがんでかたまり 背を向けながら
心のひとつも解りあえない大人達をにらむ
そして仲間達は今夜家出の計画をたてる
とにかくもう 学校や家には帰りたくない
自分の存在が何なのかさえ 解らず震えている
15の夜

盗んだバイクで走り出す 行き先も解らぬまま
暗い夜の帳りの中へ
誰にも縛られたくないと 逃げ込んだこの夜に
自由になれた気がした 15の夜


不安、怒り、絶望。 

自分の思いのすべてがこの歌と重なり、彼女の心を激しく揺さぶったのです。

 

彼女は言います。

「このやり場のない感情はあっていいんだ」

「みんなが思っていることを大げさに歌っている、でもそれはすごく大事なこと」

「それまでは言いたいことも言えなかった。尾崎の歌を聴いて、自分が思ったことを素直に表現していいんだと思えるようになった」

「自分に自信が持てて、私もこれでいこうと思えた」

「これじゃいけないこれじゃいけないって、他人と比べて劣等感ばかり感じた自分がいたけど、今、自分は自分なんだと思えるようになった」

そして

「自分自身を認めて、周りの人のことも好きになることができた」

 

彼女はその後、高校に進学、ボランティア活動もして、

自分が尾崎豊さんの歌に救われたように、将来人の助けになる仕事につきたいと考えるようになりました。


他にも、ギターをかき鳴らし僕が僕であるためにを歌うことで、僕は僕でいいんだと思えた人。

 

自分の生き方は正しいのかと迷った時、シェリー」を歌い、

弱さも十分思い知った上で自分に正直に生きていきたいと心に誓う人…。 

 

 

尾崎豊さんの歌が何故人の心を救い励ますのかと考えたとき、

彼は決して、頑張ろう、前を向いて歩こう、きっといいことあるさ、とは歌わなかったけど、

彼自身の苦悩や弱さ、やり場のない怒りをさらけ出すことで、

聴く者の、それまで駄目だと思い込んでいたありのままの感情を解放させてくれたのではないでしょうか。

そして、自分は自分でいいんだと思わせてくれたのではないでしょうか。

 

それこそが「あたたかな自己肯定感」なのかもしれません。

 

 

※2011年当時のブログに投稿した記事に加筆修正しました。ご了承くださいm(_ _)m

 

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