中島みゆきさんの「化粧」を歌っていて
あれ?この女の人の感じ、何処かで?…と。
化粧なんて どうでもいいと思ってきたけれど
せめて今夜だけでも きれいになりたい
今夜あたしは あんたに逢いにゆくから
最後の最後に 逢いにゆくから
愛してもらえるつもりでいたバカな自分
最後の最後に化粧をしたきれいな自分を見てほしい
化粧なんて どうでもいいと思ってきたけれど
今夜死んでもいいから きれいになりたい
こんなことならあいつを捨てなきゃよかったと
最後の最後に あんたに思われたい
きれいになって
あいつを捨てなきゃよかったと思われたい
バカだね バカだね バカだねあたし、と続きます。
みゆきさんならではの恨み節とでも言いましょうか。
初めて聴いた時、惨めにも思える本心を抉り出すような歌詞に衝撃を受けました。
だけど、嘘じゃないみゆきさんの歌にその瞬間引き込まれたのも事実。
ちなみに、「化粧」がリリースされたのは1978年4月(アルバム『愛していると云ってくれ』に収録)。
当時、“きれいになって捨てなきゃよかったと思われたい”ような人はいなかったけれど、何度も何度も聴きました。
いつしか歌の中の“あたし”に感情移入して、涙を流すことも。
みゆきさんの歌は、隠してきたおのれ自身の惨めで愚かな感情があってもいいのだと言ってくれているようで、心が解放されました。
そういう意味で彼女の歌には本当に救われました。
最初に戻ります。
今さらですが、吉田拓郎氏の「外は白い雪の夜」にもそんな女の人がいたと気づいたのです。
あなたが電話でこの店の名を
教えた時から わかっていたの
今夜で 別れと知っていながら
シャワーを浴びたの 哀しいでしょう
今夜で別れるあなたと私
あなたの瞳に私が映る
涙で汚れてひどい顔でしょう
最後の最後の化粧するから
私を綺麗な想い出にして
最後の化粧するから綺麗な私を想い出にして
ね。なんだかリンクしません?
「外は白い雪の夜」は1978年11月にリリースされたアルバム『ローリング30』に収録されており、作詞は松本隆氏です。
みゆきさんの「化粧」は同じ年の4月。
「外は白い雪の夜」では女性だけじゃなく男性からの別れの言葉が描かれていて、「化粧」のアンサーソング?ともとれるのかなと、勝手に思った次第です。
ところで、
最後の最後に綺麗な想い出にしたいと思うか、と自分を振り返ってみると、そうではなかったなぁ。
なーんて、あっという間に振り返られる程度の恋しかしておりませんが、それらの恋の終わりはいつもみっともなかった。
逆ギレの様な手紙を出したり、音信不通で逃げたり。
最後は綺麗な想い出にしようとか、まして捨てなきゃよかったと思われようとは考えもしなかったな。
恋が冷めるのがどちらからとか関係なく、これはもう無理だと感じるとさっさとお終いにしたくなった。
すがるなんて出来なくて、バッサリ。後はどう思われようがどう言われようが構わない。
突拍子も無く短気なんです。
今でもふと思い出すことありますが、ちょっと苦い。
最後の最後まで恋を求め切れなかったこと、きちんと別れの苦しみや哀しみと向き合わなかったこと、情けない思いで苦いのです。
あいつを捨てなきゃよかったと思わせたくて最後の化粧をするあたし
涙で汚れてひどい顔に最後の化粧をして綺麗な想い出にしてと願う私
彼女たちにとってそれは、いつかきっとその時の純な想い出として美しく愛おしく残るのではないかなと思ったりします。
『愛していると云ってくれ』中島みゆき
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