『名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN』 観ました
2024年製作/アメリカ/140分
あの ボブ・ディラン の映画
“名もなき者”だった彼がフォーク界期待の新星になり、やがてエレクトリックサウンドに転向して世界に衝撃を与えるまでの5年間(1961~65年)を描いている
公開されたばかり
ネタバレにご注意くださいm(__)m
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2016年に歌手として初めてノーベル文学賞を受賞したボブ・ディランの若い日を描いた伝記ドラマ。
「デューン 砂の惑星」「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」のティモシー・シャラメが若き日のボブ・ディランを演じ、「ウォーク・ザ・ライン 君につづく道」「フォードvsフェラーリ」などを手がけてきた名匠ジェームズ・マンゴールドがメガホンをとった。
1961年の冬、わずか10ドルだけをポケットにニューヨークへと降り立った青年ボブ・ディラン。
恋人のシルヴィや音楽上のパートナーである女性フォーク歌手のジョーン・バエズ、そして彼の才能を認めるウディ・ガスリーやピート・シーガーら先輩ミュージシャンたちと出会ったディランは、時代の変化に呼応するフォークミュージックシーンの中で、次第にその魅了と歌声で世間の注目を集めていく。
やがて「フォーク界のプリンス」「若者の代弁者」などと祭り上げられるようになるが、そのことに次第に違和感を抱くようになるディラン。
高まる名声に反して自分の進む道に悩む彼は、1965年7月25日、ある決断をする。
ミネソタ出身の無名のミュージシャンだった19歳のボブ・ディランが、時代の寵児としてスターダムを駆け上がり、世界的なセンセーションを巻き起こしていく様子を描いていく。
ボブ・ディラン役のティモシー・シャラメのほか、エドワード・ノートン、エル・ファニング、モニカ・バルバロ、ボイド・ホルブルックらが共演。第97回アカデミー賞で作品賞をはじめ計8部門でノミネートされた。(映画.comより)
まず、全編を通して流れる楽曲がどれもこれも素晴らしかった
自分にとってボブ・ディランと言えば「風に吹かれて」だったが、恥ずかしながら他はいくつか聴いた事があるといった程度
ところが作品の中で初めて知るような楽曲も含めて、彼の歌が本当にどれも良かった
ボブ・ディランってこんなにいい歌たくさんあったんだと遅まきながら知った
1961~65年当時の米ソ冷戦とキューバ危機、人種差別の撤廃を求めた公民権運動、ベトナム戦争といった社会情勢の中
見えない真実を明示し、隠れた偽りを暴くボブ・ディランのメッセージ
歌詞の字幕を目で追いながら、今この時代においても鮮烈に胸に刺さる
そんなボブ・ディランを演じたティモシー・シャラメも見事だった
ボーカルはもちろん、ギターやブルースハープの磨きのかかったパフォーマンス
彼の歌と演奏は音源がそのまま本編に使われているそうだ
シャイで繊細、甘ったるく反抗的な表情も非常にセクシー
若き日のボブ・ディランってこうだったのかなと想像して、その魅力にキュンとした
ボブ・ディラン以外にもウディ・ガスリー、ピート・シーガー、ジョーン・バエズらが登場
彼らの楽曲も披露される
私よりさらに年上の方々にとって、当時のアメリカのフォークミュージックシーンは堪らないのではないだろうか
音楽好きにはワクワクする要素がいっぱい
それだけでなく、ボブ・ディランの心情や苦悩、彼を取り巻く周囲の人々との関りも丁寧に描かれていて、人間劇としても十分堪能できる
140分があっという間だった
音楽好きの方、あの時代若者だった方、特にお薦めです
……………
自分がボブ・ディランという名前を初めて知ったのは吉田拓郎さんからだったのではないだろうか
彼がディスクジョッキーをしていたラジオの深夜放送だったか
雑誌か書籍か、或いはレコードのライナーノーツに記された彼の言葉だったか
拓郎さんがボブ・ディランの影響を受けているのはよく知られているところ
2016年にボブ・ディランがミュージシャンとして初のノーベル文学賞を受賞した際
その二日前の大宮ソニックシティ大ホールでのコンサートで拓郎は
ふとギターを爪弾きながら「風に吹かれて」を歌った
♪は~う めにー ろうづますた まーんうぉーくだぅん
「彼がいなければ間違いなく僕はここにこうしていなかったと思う」と拓郎は言った
会場に居た私(たち)は、ただ嬉しくて大喝采で喜んだ
今回『名もなき者』を観て改めて深く思い至るのは
吉田拓郎は確かにボブ・ディランの強い影響を受けているということ
楽曲、歌唱、強いメッセージ性
また、その音楽人生も拓郎自身意図したわけではないだろうが
ボブ・ディランと重なる部分が多いように思える
多分ではあるが、ボブ・ディランと同じような苦悩を抱え、社会に抗って来た拓郎だろう
(などと、わかったような事を言われるのは大っ嫌いな拓郎さん。周囲に決めつけられ、既成概念に縛られることを嫌ったボブ・ディランと同じ^^;)
彼がいなければ間違いなく僕はここにこうしていなかったと思う
そう言った拓郎の言葉の重みとか真実味とかが今になってひしと理解出来た気がしている
拓郎さんはこの映画、観たかな(*´ω`*)