すっとんきょうでゴメンナサイ

風の吹くまま気の向くまま

「私の世界」~泣くな、はらちゃん

 
この頃、ふと口ずさんでいる歌があります。
 
世界じゅうの敵に降参さ 戦う意思はない
世界じゅうの人の幸せを 祈ります
世界の誰の邪魔もしません 静かにしてます
世界の中の小さな場所だけ あればいい
 
おかしいですか? 人はそれぞれ違うでしょ?
でしょでしょ?
 
だからお願いかかわらないで そっとしといてくださいな
だからお願いかかわらないで 私のことはほっといて
 
ずい分と後ろ向きで投げやりな歌でしょ。
でもね、メロディが何とも“ほのぼの~”でねぇ♪ http://youtu.be/Axkoe4FnW78
だからかな、
歌い出しを初めて聴いたとき、妙に心にしっくりときたんです。
「世界じゅうの敵に降参さ」なんて、外国の人の様に両手のひらを肩のあたりまで上げて首をすくめたい気分でね。
それでもって、おしまいの二行は、ああ~言っちゃったぁ~~!みたいなね。
そんなふうに言ってはいけないこと、よく分かっているけど、
多分誰でも少しはそんなふうに思ったことあって、
歌にして思いっきり言ってやったぁ~~!みたいな。
こういうの、毒を吐くとかガス抜きとかって言うのかな。
歌の中だけど、いや歌だから言えるのだろうけど、
自分のいじけた思いを堂々と開き直らせているところが、逆にスカッと心地いいのかな。
それに、その奥(裏側?)に実は明るさや強さや優しさも感じる。
「世界じゅうの敵に降参さ」なんて、でなきゃ言えないんじゃないかな。
 
まあ、この歌の受け取り方はそれこそ人それぞれだと思いますが。
つい口ずさんでしまいながら、自分自身はちょっと楽しいような、
ヘヘン!と言うか、ふふん・・と言うか、そんな気分なんです。
 
 
以前、映画阪急電車 片道15分の奇跡』の記事を書いたことがありますが、
その脚本も書かれ、他にも数々のヒット作品を生み出してこられた脚本家岡田惠和さんによる連続ドラマ
泣くな、はらちゃんの挿入歌、「私の世界」です。
歌詞も岡田さんが書かれました。
 
ドラマの登場人物、越前さん(麻生久美子さん)
家庭や職場の様々な場面で、上手くいかないことに傷つき神経をすり減らし、
しかし、性格上決して口に出来ない不満や鬱憤を漫画にして、そこに登場するキャラクターに吐き出させます。
この詩は物語の中で越前さんが書いたものですから、こんなに後ろ向きで投げやりなのです。
 
密かに、いえ結構かな、話題になっているようです、この歌。
みんな、あるんだろなと思う。
ちょいと投げやりな、いじけたくなるような思い。
この世界、しんどいからねぇ・・。
 
こんな感じで歌うのもいいゾ。http://youtu.be/vR0fQ5NeSf4
みんなで肩組んで、ね (笑)
(今思ったことだけど、この歌を聴いての感じ方って、ドラマを観ているのとそうでないのとで、きっとずい分違うんだろうな。)
 
 
 
はらちゃん(長瀬智也さん)は越前さんが描く漫画のキャラクター。
ある日、ひょんなことからはらちゃんが漫画の世界から現実の世界にやってきて、
そこから始まる越前さんとはらちゃんの恋のお話です。
 
そうなのですが、それだけではなく、
岡田惠和さんの脚本ははらちゃんたち漫画の世界の住人に様々なことを喋らせます。
現実の世界に存在する極々当たり前の物事について質問させます。
真っ直ぐで汚れていないはらちゃんたちが私たちの世界について様々なことを問いかけるのです。
それがまた意味深いのです。
そうして、その問いに答えようとする現実の世界の人たちの言葉を通して、
曖昧で無意味なことにとらわれ縛られ思い込まされていること、
知らず知らずの内に、固定観念の中で大した根拠も無く正しいと思ってしまっていることが
実は身近にたくさんあるということに気づかされます。
 
憧れてやってきた現実の世界だったけど、
やがて時を過ごす間に、まさにその現実を知ってしまう漫画世界の人たち。
地球上に溢れる戦争、飢餓、貧富の差・・・。
街中では、因縁をつけ、殴り、蹴り、金銭を奪おうとする人たち。
漫画世界の人たちは心身共に深く傷つき、元の世界に帰りたいと願います。
越前さんと別れたくなくて悩むはらちゃん、越前さんの思いも同じ。
けれど、彼らをこれ以上傷つけたくない越前さんは、
「こんな世界でごめんね」とはらちゃんに謝り、彼らを漫画の世界に戻すのでした。
 
そして、あろうことか!
越前さん自ら漫画の世界へ・・・。
 
で、次はいよいよ最終回。
岡田惠和脚本がどのように終わらせてくれるのか楽しみでもあり、
しかし、越前さんとはらちゃんのあまりにも切ない恋の行方を想像すると
今から目が潤んでしまうのです。