恥ずかしながら、自分の知識としてあったのはこれだけ。
いや、もっと言えば、浅田次郎氏を新田次郎氏と思い違いしていた。ずっと。
新田次郎と言えば「八甲田山死の彷徨」など山岳小説で有名。妻は藤原てい。
ずい分と年上であられる、そして今は亡きその人の作品だとずっと思い込んでいたのだ。
先日、テレビで映画『鉄道員(ぽっぽや)』を観た。
その後、いつもお邪魔しているブログで小説「鉄道員(ぽっぽや)」を取り上げておられるのを拝読。
表題作の他に「ラブ・レター」「悪魔」「角筈にて」「伽羅」「うらぼんえ」「ろくでなしのサンタ」「オリヲン座からの招待状」。
全8編からなる短編集であることを知った。
高倉健さんが演じた映画『鉄道員(ぽっぽや)』は、凍るような悲しみや裂かれるような切なさの中にも、それらを融かすほどのしみじみと愛おしい情景が描かれていて、温かい涙が零れた。
それに加えてのこれらのタイトル。心惹かれないはずがなく、Amazonでポチリ。
翌々日に届いた文庫本のカバーに記された著者紹介を見て愕然。
1951年生まれですって⁉少し年上ではあられるがまあまあ同世代。
そこで初めて気づくのだ。新田の次郎さんではないことに。(;^ω^)
「あとがきにかえて」より
本著の初版に巻かれたオビには、こういう言葉が添えられていた。
あなたに起こる やさしい奇蹟。
「奇蹟」をモチーフとした短編を蒐(あつ)めました、というほどの意味である。
いくぶん気愧(はず)かしいけれども、いい文句だなと私は得心した。八つの物語を読みながら、読者の心に小さな奇蹟が起こってくれるなら幸いである、と思った。
1997年に直木賞受賞。140万部を売り上げた大ベストセラー作品。
今回、Amazonのレビューでも多くの人が思いの丈を書き込みされていて、この本がいかに愛されているかを遅ればせながら認識した次第。
そんな自分が今さらこの本の紹介を書くこともないのだろう。
ただ、まだ読んでいないという方がおられたらお勧めしたいなぁと。
ちょっといい話、ちょっとほっこりする話。
悲しいけれど、せつないけれど、最後にはあったかい気持ちになれる。
そんなお話が好きな方ならなおさら。
やさしい奇蹟の物語である。
思いついたこと、書こう。
「鉄道員(ぽっぽや)」。登場人物の台詞が本当に良かった。いちいち心に沁みた。
映画で健さんの声で聴くのも良かったけど、自分的には一文字一文字目で追い噛みしめることでより一層心に届いた気がした。
映画より泣けてしまった。
「ラブ・レター」も泣けたなぁ。純愛が苦しくなるほどに悲しかった。
「角筈にて」も、何だか孫のこと浮かべたりして、小さい人の愛しさに泣けた。
子はどんな親でも愛して欲しいし愛さずにはいられないってことが悲しくもあるのだ。
「うらぼんえ」。奇蹟と呼ぶならこれぞまさに痛快な奇蹟の物語。
そして、ただただひたすらに愛し守ろうとしてくれる人のいた幸せに思いを馳せ、その幸せをもう一度抱きしめたくなった。
社会の片隅で一生懸命生きる人たちへの著者の優しい眼差しがどの作品にも満ちている。
それと共に、真の正義とは、本当の罪深さとは何なのかをも問いかけられていると感じる。
ただそれは厳しく裁くでもなく、突き詰めて明白にするわけでもない。
ありきたりな言い方をすれば、人として大切なこと、守るべきものが押し付けがましくなく散りばめられ
やさしい奇蹟の物語はまるで大人の童話であるかのよう。
読み手はそれぞれのタイミングや立場などによってそれぞれに感じ入っては、自分の心を癒し取り戻そうとするのかもしれない。
余談だが、そして今さらだが、映画『壬生義士伝』も浅田次郎氏の原作と知り、深く納得。
あれも良かった。主人公の生き様と死に様に号泣したっけなぁ…。
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