年老いた両親がまだ生きていた頃、
同じ様な年格好の人を見かけると、遠く離れた地で暮らす父と母を思い出し、
つい目で追ってしまうことが度々あった。
困っているような、疲れているような、そんな様子に見えると、
どうしたのかな…? 大丈夫かな…?と心配になり、
時には傍に寄り、言葉をかけて、お手伝いさせていただいた。
自分でも抑え難い、突き動かされるような感覚で、
何もしてあげられない父や母の代わりに、お世話させていただいている気分だった。
そして、「ありがとう」と言ってもらえると、こちらこそと自分の心が温かくなるのを感じ、
つまりそれは、父と母への罪滅ぼしでもあったと思う。
2年前に母、今年の5月に父が亡くなって、
やっぱり両親に似た人を見かけるとじっと見つめてしまう自分がいる。
そんな時、心の中にあるのは、両親の晩年を一緒に過ごせなかった後悔だ。
もっと傍にいてあげればよかった。
もっと話をしてあげればよかった。
旅行にも連れて行ってあげればよかった。
そうしようと思えば出来たはずなのに、と。
先日の山梨への旅で訪れた川口湖畔の公園でのこと。
遊歩道を歩きながら写真を撮っていると、少し先で高齢のご夫婦が写真を撮っておられた。
お二人は私の両親より少しお若い世代でいらっしゃるようだったが、
細身の体に帽子を被られたご主人と小さく丸い体で色白のお顔の奥さまが、
何となく父と母に似て見えて、つい目が釘付けに。
赤いコキアの花をバックにご主人が奥さまを撮っていて。
奥さまは少し足がお悪いようだったが、柔和なお顔でカメラにポーズ。
年を重ねてのご夫婦二人旅なのだろう。
静かで穏やかな時間がお二人の周りには流れていた。
足の悪い奥さまを気遣いつつ、ご主人は何枚もシャッターを押されていて、
奥さまは言葉少なに、カメラを構えるご主人にずっと微笑んでおられて、
美しい景色の中の奥さまは少女の様に可愛らしくて、
ご主人はそんな奥さまを写真に残したいのだろうなぁと、
勝手にウキウキしながらしばらく様子を拝見していたが、
あ!っと思いついた。
お二人の写真、撮って差し上げたい。こんなに素敵な景色なんだもの、と。
それで、又いつもの調子でお節介を焼く私。
頼まれてもいないのに。迷惑かなと考える間もなく。
「お写真、お撮りしましょうか?」
すると奥さまがすかさず「ありがとうございます!お願いします」と言って下さって。
ご主人も「いやぁ、すいませんね。じゃ、よろしくお願いします」
喜んでもらえて良かった。
お二人の旅のアルバムに、赤いコキアの花の前でお二人並んで微笑む写真が加わることを想像し、勝手に幸せな気持ちになった。
奥さまも自分ばかりではなく、本当はご主人と一緒に写りたかったのかなと思うと、
役に立てたかもしれないことが嬉しかった。
(実際は私よりカメラの腕前が上の夫に撮ってもらった(^^;)
「どうぞお気をつけて」と後ろ姿を見送りながら、
どうしたって父母の姿を重ね、
してあげられたこと、まだいっぱいあったのになぁと、また切なくなるのだった。
河口湖大石公園にて
ちなみに、お返しにとご主人が撮ってくださった私たちの写真、
お二人の仲睦まじさに影響されたかのような、実にナイスなショットでした(笑)
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