映画『オードリー・ヘプバーン』観ました。
強い目力と真紅のルージュに射抜かれます。
街中の雑踏に負けない息を吞む美しさです。
お顔の造作がパーフェクトで美しいのはもちろんだけど
何故、こんなにも魅了されるんだろうと思うんですよね。
真っ直ぐに見つめる意思のこもった眼差しも
愁いを含んだ儚げな眼差しも
一分の隙もない端正な表情も
一転、少女のような愛くるしい笑顔も
すべて彼女を表している。
凛とした立ち姿
妖精のようにしなやかな身のこなし
華奢な体に纏うドレス姿の圧巻ぶり
かと思うと、
ショートヘアにブラウスとスカートの瑞々しい溌溂さ
サブリナパンツのカッコ良さたるや
それらのすべてが私たちを釘付けにし、幸せな気持ちにさせてくれる。
そんなオードリー・ヘプバーンのことは
私などが言わずとも、きっと多くの人が知っているでしょう。
1993年1月、オードリーが63歳で旅立ってから30年が過ぎ去ろうとしている今。
名声に隠された本当の姿を描く、初のドキュメンタリー映画です。
永遠の妖精と呼ばれ、美の概念を変えた革新的な存在でスターとしての名声を得たオードリー。
世界中から「愛された」彼女は一方、実生活では愛に恵まれなかった。
しかし、「人生の最後に、自分ことを好きになれた」と語る彼女の本当の人生とはー。幼少期に経験した父親による裏切り、そして第二次世界大戦という過酷な環境で育ったオードリーは過去のトラウマと一生涯向き合うことになり、私生活にも影を落とすこととなった。
輝かしい映画女優として活躍する一方、幾度の離婚を繰り返して愛に破れていくが、子供達への深い愛情を注いでいく。そして後年、ユニセフ国際親善大使として彼女は世界中の子供達のために、自身の名声を捧げ、この活動に生涯を捧げた。
恐怖や憎しみに溢れる世界で愛の重要性のために立ち上がったオードリー。(公式サイトより)
数々の貴重なアーカイブ映像
家族や友人、ごく親しい人たちによるオードリーのプライベートに迫るインタビュー
100分の上映時間、身じろぎもせず見入ってしまいました。
以前、テレビでオードリー・ヘプバーンの特集番組を観たことがあります。
幼少時の戦争体験や
そこから繋がるユニセフの活動。
後年の彼女の献身的な活動にとても感銘を受け、ブログにも書きました。
今回の映画で、愛に飢え、愛を求めたオードリーだったこと、初めて知りました。
気高さと無邪気さが混じり合う微笑みに私たちは魅了され続けましたが
その裏側にあった彼女の孤独。
いつしか愛を貰うより、与えることを選んだオードリー。
それは愛する我が子へ。
世界中の傷ついた子どもたちへ。
そうして命を削るように献身を尽くし
彼女は天に戻って行った。
63歳という、短いとも思える生涯ですが
その一生をかけてたくさんの愛を与え続けた彼女は
天から使わされた天使だったのかも
そんなことを思うと、どうしようもなく切なくて涙が零れました。
それでも最後、心から信じられる愛する人と共に過ごせたことに救われる思いも。
オードリーがようやく手にした
何でもない、ごく普通の
でも彼女が本当に欲しかった「愛」だったのでしょう。
ところで、
何と!インタビュー映像に大好きなリチャード・ドレイファスが登場。
そのことを知らなかったし、最近の彼の姿をとんと見ていなかったので、驚くやら嬉しいやら。
まぁ、ちょっと(いや大分?^^;)お変わりになっていましたが。
オードリー・ヘプバーンの最後の出演映画は『オールウェイズ』(1989年)。
亡くなる3年程前です。
スティーブン・スピルバーグが監督で、リチャード・ドレイファスが主演でした。
オードリーは天使の役。
歳を重ねてもなお、清純で気高いオーラと慈しみ深い微笑みが天使そのものでした。
リチャード・ドレイファスはインタビューで
「“昔の役柄は個性がない”とみんな言うが、オードリー以上の個性の持ち主がいたか」
と語っています。
確かに。
圧倒的なオードリーの美貌の前に
ついそればかりに心を奪われがちですが
彼女の持って生まれた内面性が
自ずと、演じた役柄のどれをも個性的且つ魅力的に高めた
私もそんなふうに思います。
以前の記事で、晩年のオードリーについてこんなことを書きました。
正直言えば、世界中を魅了した若く美しいオードリー・ヘプバーンの晩年の容姿に、少なからず驚いたものです。
人は歳をとればあちこちが緩み、シミやシワが現れるのは致し方ないことですが、
それに抗い、何とか補正修正し、出来る限り美しいままでありたいと願う女性は多いのではないでしょうか。
私のようなただのオバサンですらそうなのです。
ハリウッドの大女優さんたちは当然そのためにありとあらゆる努力をなさっているものと思っていました。
しかし、オードリー・ヘプバーンという大女優は歳を重ねたありのままの姿を、あるがままに見せてくれている。
オードリーという一人の女性が信じる生き方が明るく堂々とそこにあり、驚きながらも強く励まされた私です。
深く刻まれたシワでさえ誇らしく、何のわだかまりも無い純粋さで微笑むオードリーの笑顔は異次元のように神々しくもありました。
亡くなった後に癌を患っていたということを知り、ああ、そうだったのか、だからだったのかなと思いました。
そんな体でユニセフ親善大使として世界を回ったこと、負担は大きかったことでしょう。
けれど、
親善大使に任命された時「私は全人生をこの仕事の為にリハーサルしてきて、ついに役を得たのよ」と語ったというオードリーにとって、
世界の恵まれず苦しんでいる人たちの為に働くことは自分自身を支える生きる力にもなり、この上ない喜びだったのかもしれません。
63歳だったのですね…。
彼女の生き様がありありと刻まれた顔には、真の美しさが宿っている。
それは紛れもなく彼女の生き方が美しかったことに他ならない。
そう思わせてくれるオードリー・ヘプバーン。
果たして今の自分はその様にシワを刻んできただろうか。
これからその様にシワを刻んでいけるだろうか。
シワを憂うばかりの自分でしたから。
私自身63歳になり、この時の思いを再び強くした、映画『オードリー・ヘプバーン』でした。