すっとんきょうでゴメンナサイ

風の吹くまま気の向くまま

戦没画学生慰霊美術館「無言館」を訪ねて

 

9年前の夏の終わりのことです。

ふと思いついて、大学生だった末っ子を誘い長野まで車で出かけました。
目的は美術館(と温泉)。
絵画鑑賞は娘の好きなことでもあり、
何よりその美術館は私が一度訪れたかった場所でした。

 

戦没画学生慰霊美術館「無言館

第二次世界大戦で没した画学生の慰霊を掲げて
平成9年、信濃デッサン館の分館として作られた美術館。
館主は窪島誠一郎氏。(父上は作家の水上勉氏)
自らも出征経験を持つ画家の野見山暁治氏とともに全国を回り
戦没画学生の遺族を訪問して遺作を集めた。(Wikipediaより)

 

長野県上田市
周りを山々に囲まれた“信州の鎌倉”とも呼ばれる塩田平の丘の上にその美術館はありました。

駐車場で車を降り、木々の繁れる中を歩いていく先に、
コンクリート造りのまるで教会のような建物が見えてきます。

 

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あなたを知らない


遠い見知らぬ異国(くに)で死んだ画学生よ
私はあなたを知らない
知っているのはあなたが遺したたった一枚の絵だ

あなたの絵は朱い血の色にそまっているが
それは人の身体を流れる血ではなく
あなたが別れた祖国のあのふるさとの夕灼け色
あなたの胸をそめている父や母の愛の色だ

どうか恨まないでほしい
どうか咽かないでほしい
愚かな私たちがあなたがあれほど私たちに告げたかった言葉に
今ようやく五十年も経ってたどりついたことを

どうか許してほしい
五十年を生きた私たちのだれもが
これまで一度として
あなたの絵のせつない叫びに耳を傾けなかったことを

遠い見知らぬ異国で死んだ画学生よ
私はあなたを知らない
知っているのはあなたが遺したたった一枚の絵だ
その絵に刻まれたかけがえのないあなたの生命の時間だけだ

窪島誠一郎
一九九七・五・二(「無言館」開館の日に) 

(「無言館」ホームページより)

 

正面の木のドアを押して入ると、
たくさんの絵や作品が展示されているのがすぐ目に入ってきます。
また、絵筆やイーゼルなどの愛用品、写真、スケッチブック、手紙など様々な遺品も展示されていました。
それぞれの作品の下には作者のプロフィールが紹介されているのですが、
亡くなられた年齢はどれも20代と若く、
そんな若さで命を散らさなければならなかった無念が作品の中から聞こえてくるようでした。
愛する妻、愛する恋人、愛する家族を描いて戦地に赴いた、その気持ちはどうであったのでしょう。
きっと…と想像するけれど、
いやきっとあの時代、私などには到底想像し得ない苦しく複雑な思いで、
でもそれを断ち切るようにして行かれたのだと、そう思うことしかできませんでした。

そんな中で、より強く訴えかけてきたのが画学生たちの“自画像”でした。
皆、こちらを強く見据えながらも、その瞳に悲しみを湛え、何か言わんとしている。
悔しさ、怒り、諦め…。

まるで血の涙を流しているかのような彼らの自画像に、言葉も出せずただ立ち尽くすばかりでした。

 

美術館を出て見上げた信州の空があまりにも晴れ晴れと明るくて、
今目にしてきたものとのギャップに一瞬戸惑ってしまったこと、憶えています。

 

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入館チケットの裏に書かれていた言葉です。

私たちに出来ることは
見えぬものを見、きこえぬ声をきくために
努力することでしょう。
そして
ずっと忘れずにいることなのでしょう。

 

戦後75年という年月が過ぎ、否が応でも風化が進もうとしています。

見ること、聴くこと、知ること。その為に努力すること。そして忘れないこと。

大切にしていきたいです。

 

 

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