じぶんのことはわからない。
だから、ちょっと新しいことを知ったりすると、
とてもおもしろいなと思ったりする。
これほど近くに(なにせ本人なんだから)、
ずいぶん大きな秘境があったんだなと思うと、
探検家のようなよろこびを感じる。
とおっしゃるのは糸井重里さん。
“大きな秘境”という言い回しに妙に納得する。
たとえば、
糸井さんはもともと脂っこいものが苦手だったのに
いつのまにか脂を好んで食べるようになっている自分をある日発見。
「そうか」と思ったときは嬉しかったそうだ。
また、
瞑想を手助けするアプリを試しているとき
見えている景色を「実況中継のように描写してことばにしていく」ことに
思いもよらないほどの不快感を覚えることを発見したという。
コピーライター、エッセイストとしてことばを操り
生業になさっている糸井さんがそうであられることに、私も「へぇーー」。
私も「じぶんのことはわからない」と思ったことが何度かある。特に最近。
自分自身が把握している自分と「表に出ている自分」が真逆なのだ。
幼い頃から、自分はポーカーフェイスだと確信してきた。
嫌なことがあっても気にしていないふり。
意地悪なことを言われても聴こえていないふり。
傷つくことがあっても堪えていないふり。
当然、そんなふりをしていることも気づかれないように。
嬉しいことや楽しいことには正直に反応できるのだけど
マイナスな感情がじわじわと出てきたときに
それが露わになることを必死に抑えようとした。
あくまでもポーカーフェイスで。
と、思っていた。
が、最近、そうではないようだと気づかされる。
あれれ?と首をかしげることがあって家族や友人に訊ねてみる。
「ワタシって、ポーカーフェイスだよね?」
皆が皆、「えーーー!?
全然違う!! て言うか、すっごくわかりやすいよ~~」

どうやら、
(あ、怒ったな)とか
(あ、不本意だな)とか
(あ、へこんだな)とか
もろ分かりらしい。
顔に出ているらしい。
嬉しいとき、楽しいとき、暑苦しいぐらい歓喜が溢れ出るのはもちろん、
怒り、悲しみ、意気消沈のときにもそれはもうイタイほどに露わになるわたし、であるらしい。
衝撃!!
まさに大発見。
今ごろそのことに気づかされたのだけど
もしかしたら、子どものときから周りにはバレていたのかもしれないなぁ。。
ポーカーフェイスを装う私を、逆に気づかないふりで気遣ってくれていたのかもしれない。
そう言えば・・と、思い出すこともあったりして。
もう一つ。
自分が把握している以上に声が大きいこと。
お店などで小さい声で話しているつもりなのに
「おかあさん、声、おっきい!シーーーー!」と娘にしばしばたしなめられる。
独り言のように呟いたつもりが、周りの人に返事されたり、微笑みと共に頷かれたり。
普通に話しかけたらビクッと驚かれたこともある。
声が小さくて周りの人に届きにくいとずっと思っていたが、いやいや、けっこうな大声だったようだ。
試しに、自分的にはかなりの小声で娘に話しかけたら「全然聞こえるよ。それぐらいがちょうどいい」と言われた。
これも、己の中の秘境、大発見だった。
それからは、人に話しかけるときは出来るだけ優しく、ささやくように声をかけている。
お店などでもヒソヒソと。
また、むやみやたらにつぶやかないよう気をつけている。
「じぶんって、どういうもの?」を発見して憶えていく。
これはもう、ライフワークというくらいのテーマだ。(糸井さん)
自分がどういうものなのか。
自意識に縛られていた若い頃は、自分がどういうものかを面白がる余裕はなかった。
自分がそうであることが嫌だったし、悲しんで抗っていた。
自分自身を持て余しつつ維持することにいっぱいいっぱい。
新しい自分に気づくこともなかった。
でも今、歳を重ね、自分がどういうものなのかを諦めつつも受け入れることができるようになった気がする。
新しい自分を発見することが面白いという糸井さんにも、うんうんと共感する。
それどころか、
新たに駄目駄目な部分を発見した時にゃ、そうかそうかと愛おしくなったりするのだ。
などと、自分に甘っちょろいこと言ってちゃあそれこそ駄目なのだろうが
歳を重ね会得した開き直りで、駄目な自分をこっそり楽しんじゃっているんだなぁ。
「じぶんって、どういうもの?」かを、これからどのくらい発見できるのだろう。
発見するたびにクスクス(笑)するのだろうか。
ちょっと楽しみだなぁ 


ところで今日、ローソンで買い物し、レジで支払の際。
ポイントカードを出そうとしてどのコンビニだったか急にわからなくなり
「あれ・・ここはロー・・?」と小さい声でつぶやいたら、「ローソンです」とレジの女の子。
「ああ、そうね」とごまかし笑いをしながらポンタカード(ローソンの)を出す。
と、
「ポンタカードお持ちですかぁ?」とあくまでもさりげないレジ嬢。
見ると、イオンのワオンカードが置かれていた。
「あらら・・」とまたしてもごまかし笑いでポンタカードを探すも、生協のポイントカードや保険証をお披露目。
ようやく取り出せて「なんだかごめんなさいね・・」と肩をすぼめるオバさんに
「ダイジョウブです~」とさらっと笑顔をくれた彼女。
ありがとうねーー!
今までもちょいちょいあったけど
今日はなかなかのとんちんかんぶりだった。
これは、新しい自分を発見と言うべきか
自分の老化を思い知らされるの巻、と言うべきか。。
